hinatazoukeisha’s blog

日表造形社:2015年4月創立純文学文芸結社。主催:小柳日向。活動:主に純文学小説の創作と販売。傍で、詩誌のアンソロジー企画と装丁画の外注や紙媒体のデザインも請け負っている。

前記事追記:カタログ表紙制作秘話

書くの忘れておりました……。事務局様に許可を頂いておりましたので、カタログ表紙制作秘話の記事を書きます。


カタログ表紙完成データ

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ここまで辿り着くのに、打ち合わせ、ラフ提出、再度打ち合わせ、制作、納品、納品後文字入れ打ち合わせ、原画展示の為の額縁制作、展示までの流れで。


最初の打ち合わせ段階では、かなり難しいと感じた依頼内容でした。制作期間にも遊びが殆どないのも、悩みました。なので、打ち合わせを重ね、具体的に具体的に絞っていくうちに、ラフを3つ仕上げ提出したところ、第二案であった、この猫ちゃんが通りました。

因みに、ラフ1はカニの脚が生えた女性が本を読んでいる絵。ラフ3はカエルが水面の葉っぱの上で本を投げ出して寝ている絵。でした。

内在的なテーマ性を持った依頼であった為に、表現の仕方、構図、色調等頭を捻りましたが、依頼主様の感性を如何に引き受け、表現に持っていくかが、今回の仕事で最も重要だったように思います。

そして、制作期間としても、油彩は間に合わないだろうという判断もあり、不透明水彩を選択しました。昨今、メディウムなどの勉強に勤しんでいましたので、GOが出たラフで制作へ。


制作は集中しては、ちょいちょい煙草休憩し、また取り掛かる。という具合で、制作中は絵の前から殆ど離れなかったです。

ザッと制作過程を一気に。変わってないようで変わってるって感じです。特に、本の部分は、ラフの段階で先方から言われておりました「本と本が滲んで連なっている様が、文学の連綿性を表しているようでよい」と言うような言葉だったと思いますが、それでやはり、字体も実際の出版物の字体をモチーフに、溶け合うようにしました。マチエールなども色々拘ってはいたのですが、やはり一番骨が折れたのは、本の部分でした。

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煙草休憩の時に記録として撮っているので、如何に文字の部分が時間が掛かったか、ということが、おわかり頂けただろうか?(それでは、もう一度……という、展開はないです)

ラフの段階ではなかった、追加での要望に、できれば「時間」「季節」というものがあったので、こんな感じで仕上がりました。

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ふぅ……。納品が終わると仕事終わったー!感がありましたが、程なくして、先方のカタログデザイン担当さんの案が届き、ここでまた議論に発展し、何時迄も続きそうな果てしない議論でした。デザイン担当さんと私との間に入っていた副代表さんが、かなり熱心な方でしたので、文字入れについても妥協を許さないという、九州男児魂が素晴らしかったです。本当によい勉強になりました。


文字入れ打ち合わせ終了後は、原画も納品していたし、という具合でのんびりした感じでしたが、依頼の段階では額装まではしなくていいとの話だったんですけれど、私の方の事情で、額装は無料でという運びで額装まで。

懇意にしている画材屋さんに行けば、程よい額縁見つかるだろうと、呑気に思っており、一旦返却して頂いた原画を持って行こうと問い合わせた所、原画サイズの額縁の在庫が無く、取り寄せになるとのこと。そして、取り寄せていたら、当日に間に合わないという事実。

急遽、ナフコへ行き、木材等を購入し、箱額という手作りの額縁を作ることに。打ち付け額なら、かなり簡単に作れちゃうんですけれど、今回はなんか額ももっと綺麗に作りたい!という、依頼とは関係ない欲が出てしまい、箱額という選択へ。

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床が本当に木屑まみれという、状況でしたし、本来ならシートを敷いてするんですけれど、楽しくなってきちゃうと、周りが見えなくなってしまい、着彩も床にアクリルインクやジェッソが飛び散る。という状態。賃貸なので、こういう状態になって後から後悔します。

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後悔で項垂れながらも額を作っている私を、猫ちゃんが見下しているようです。

そして、さっきの状態からサンダーでヤスリ掛けをし、角も少し丸みを帯びた優しげな感じにして、着彩は黒のアクリルインクをバックの板に、青のアクリルインクを縁の棒に、ジェッソで色調を抑えたり、原画にも使っているドロッピングという技法で、各所に滲ませていきました。あとは、透明ニスを塗って……

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打ち付けて完成。

終わったー!!と思って文フリの荷造りしている時に、ふと思い出して、「あ、キャプション……」ということで、キャプションも制作。


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会場ではこんな感じに。(後々配置変わりましたが)

もう絵画設営の仕事を2年半くらいやっていたという過去もあるので、一応水平器やらヒートンやら紐やらスケールやら専用手袋やら、何から何まで自宅にあったんですが、壁に穴を開けることもできず、されども天井から吊るすチェーンもない会場でした。

美術館じゃないものね。

なので、私物の折り畳み式イーゼルを持参して展示しました。あのイーゼルで油彩とかも描いているので、洗っても絵の具落ちないので、汚いイーゼルでごめんなさい。


ざっくりですが、今回の仕事はこんな感じでした。この依頼から文フリ福岡当日まで、プライベートもバタバタしてましたので、何だか濃密な期間に感じられました。

事務局様には大変お世話になりました。

ありがとうございました。


それでは、以上になります。


日表造形社:小柳日向